ローマの街の中を 流れているテーベレ川….本当は河の方がいいのかもしれないが、伝統的に川という漢字が使われてきたので、川にします…… 川というか、水というか、本能的にそういう 物を見ると (海の場合は なおさら)、我々の原始的な神秘的な部分に戻っていくような…..飽きもしないで見つめられる……ローマ観光って、この川の存在で、ずいぶん得をしているのでは、ないでしょうか ….
現在のテーベレ川を見ると、土手があって草が広がり、柳の木が 枝を垂れているような、そのような光景は 少なくとも街の中心部には、ありません。なんだか川というよりも、水路、と 受け取った方が いいような、冷たい感じが、しなくもないですが…..
ただ、現在の堤防が 造られる以前 (1870年 に計画され、長い間かかって、完成をした )は、どうしようもなく、氾濫に次ぐ氾濫を 繰り返していた テーベレ川でした。特に 土地が低くなっている地帯….パンテオン周辺など、洪水になった時は、パンテオンの中で、小舟をこいでいるスケッチ画が、残っているほどです。Circo Massimoや、Foro Romano 等も、水びたしを、免れませんでした。
死者、行方不明、建物の破壊…..水が引いていく時には、泥が、ヘドロが残り、伝染病、特に チフスを、引き起こしていった様です。
この残った泥、瓦礫(がれき)、破壊された家、などで、ローマの地面も、高くなっていきました。今でもその段差が わかるのは、Largo Argentina でしょう。紀元前の神殿の遺跡が並んでいますが、その遺跡のある場所が、2000年前の土地の高さ、その遺跡の一ブロック向こうに、テーベレ川が 流れているわけで、度々の洪水で、中世の時代には、もう現在の私達が立っている場所が、土地の高さに なっていったようです。
街を歩いていると、所々 、文字が刻んである小石板が、建物(ローマは、1300年代から、1800年代の建物で埋まっています)の壁に貼ってあります。例えば、S.Eustachioサンテウスタキオ教会(パンテオン周辺)の 近くにも、「 1495年、アレクサンダー六世教皇の3年目に、洪水が起こり…..」と、記されています。洪水時の 最高の 水の高さは、20mにまで達したといわれ ( 20mというと、コロッセオのそばにある コンスタンティヌス皇帝に捧げられた凱旋門と同じ高さ ! )、これ以上の記録は、まだ破られていないそうで、この洪水を記憶しようというので、小石板が、あちらこちらに貼られたそうです。
最も古い小石板は、1277年からお目見えし、合計122にも、なったようです。ちなみに、S.Maria in Cosmedin教会(真実の口がある)から、テーベレ川に 上がると、橋の真ん中へん辺りだけ残っているような 壊れた橋があり、まさに il Ponte Rotto ( 壊れた橋)と、呼ばれていますが、これも1495年の洪水で 壊され、真ん中あたりが、かろうじて 残ってきました。
1870年12月にも、又々起こり、17mの高さで建物が水びたしになり、 イタリア王国になったばかりでしたが、 Vittorio Emanuele II ヴィットリオ・エマヌエレ・セコンド国王が、「 Basta バスタ !!!!」 … 充分だという意味から、もうこれ以上は、我慢が出来ない、というニュアンスにも、使われる….と、叫んだかどうか知らないが、ともかく 洪水防ぎの計画案考えが、始まりました。
委員会が 設置され、いろいろな案が出ます。テーベレ川の流れを、ローマの北から、変えてしまおう。ティベリーナ島を、壊そう。ティベリーナ島を はさんで、両側に 川が流れているが、どちらか一方を、せき止めてしまおう。川が カーヴしているから 危ないんだ、まっすぐにしよう…..そうすると、古代ローマの街区域を、破壊することになるが、それでもいいのか、いや 良くない………..
川底を掃除し、幅を一定にしよう……紀元後1世紀、ティトス皇帝が、エルサレムの街を包囲し、最後に勝利を収めましたが、その際に、戦利品の中に、七本の金の燭台も、混ざっていたそうです。さて、現在それがどこにあるのか…..
はるか彼方の昔に、溶かされてしまったのか、サン・ピエトロ大聖堂の 地下に、ひそかに保管されているのか、それとも 戦利品を運んできた船が、テーベレ川をさかのぼる最中に、難波してしまったとも言われているので、今でも川底に あるのか……そうだとしたら、ワクワク、面白そうですね…..え、地中海で難破しなかった船が、川ごときで難破するのかって ? ….まあごもっともな質問です…..もう航海も最後にかかっていたから、船が ボロボロになっていたのかもしれない ……ともかく、昔のテーベレ川は、もう少し底が深かったそうですが…..
サッカーチーム As Romaが、街の上流にあたる地 ( Tor di Valle ) に、競技場を立てようという計画がありましたが、難航していた理由の一つに、テーベレ川のカーブに はさまれた場所なので、洪水があったら、どうするんだ、というのもあったらしい。すったもんだした挙げ句、最後決定として、Tor di Valleは、没になったみたいです。競技場だけでなく、高層ビルもたてる、新しい街の一区域を造る、とか、市役所もあいまって、収拾がつかなくなったようでもあるらしい。
それではというので、Tor Vergata が 候補に上がり、しかし 街から遠過ぎる ( 地下鉄A線の最終駅Anagnina から市バスで まもなく、という所 )というのも問題の一つ…..
では、Ostienseの 元中央卸売り市場跡(地下鉄B線の Garbatellaを出たらすぐ )に、競技場と駐車場だけ立てよう、とか 様々…..
オリンピック競技場を現在使用している As Romaですが、1953年からの古さなので、もうボロボロ、改築したら、という案は、これ又難しい、というのは、競技場は国の所有に属するので 市役所は 関係ない、他のスポーツや、もう一つの サッカーチーム Lazio もホームグラウンドとして使用している…..Torinoのサッカーチーム ユーベントスが、3年間だけで ホームグラウンドを 造ったのに比べると、As Roma の悩みはつきないようです…..
さて、あれもこれも 何もかも含めて、今日もテーベレ川は、流れていきます。
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