イタリアのお歳暮?

今年は、特別な状況下での一年となりましたが、残すところ僅かとなりました。

12月に入る前から、日本でもおなじみのイタリアのクリスマスケーキのパネットーネやパン·ドーロがスーパーに姿をあらわし始めます。

「え?もうそんな時期?」と思っているうちに、本格的にシーズン始まりとなる8日あたりになると、スーパーでは特別コーナーが作られて、いろんなメーカーのパネットーネ、パン·ドーロに加え、箱に入ったスプマンテ(イタリアの発泡酒)とのセット、有名なパスタメーカーの数種類のパスタの詰め合わせ(cestinoチェスティーノという)、かごに入った食料品の詰め合わせ、コーヒーのメーカーのコーヒーの詰め合わせなどなど、山積みになります。

これ、日本のお歳暮のように、お世話になった方々、家族、親戚などに配ります。手作りのクッキーや自家製のワイン、サラミを送る方もいます。ちなみに、うちは「今のところ」パン·ドーロを10個、箱入りスプマンテを3本、パン·ドーロ、スプマンテのセットを2箱くらいの予定です。(少ない方です。) 仲良くしている方々からは、送る方に前年もらった物や毎年もらってる物をリクエストしてくるのもありだそうで、面白いです。

個人的には、一昨年、お正月明けに帰国した時には、パネットーネを10個くらい、布製のエコバッグに入れて、お土産にしました。とても喜ばれました。

ここ数年は、値段が高めでも、パン屋さんやケーキ屋さんの手作りの物が好まれる傾向のようで、よくお店のウィンドーにPanettone artigianale (パネットーネ  アルティジャナーレ)と書いてあります。実際に食べ比べてみると新鮮な味がします。次回のお土産にいかがですか?

神戸 裕美

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イタリア人のファミリークリスマス

花屋さんの店頭に真っ赤なポインセチア(Stella di Natale クリスマスの星)が所狭しと店頭いっぱいに並び始めました。もうクリスマスです。大人も、子供も待ちに待ったクリスマス。こんな言葉があります。Natale con i tuoi、イタリアではクリスマスは家族と一緒に過ごす、という意味です。

クリスマスにはそれぞれ離れて暮らしている家族達も、たとえほかの都市に住んでいても、たとえ1000キロ離れたところに住んでいても、クリスマスにはMamma(お母さん)の下に集まり、家族そろってテーブルを囲むのです。イタリアは、キリスト教カソリックの国。クリスマスは一番大切な祝日です。

12月8日Immacolata(聖母マリアの無原罪の御宿り)前後に各家庭ではクリスマスツリーを飾ります。その下にはプレセピオ、これはキリスト誕生の場面を表し、聖母マリアとヨセフの像の間には、小さなキリストの像が12月24日の真夜中12時に置かれます。聖家族だけのものから、東方3博士を加えたもの、更に羊飼い、羊、牛、ロバなどベツレヘムの町をそれぞれミニチュアの像で再現される大掛かりなものまであります。ローマ市内では大きなプレセピオが、サンピエトロ広場、ナボーナ広場、スペイン階段、各教会に飾られます。

そしていよいよ全家族集合の12月24日イブの夕食、25日クリスマスの昼食、26日聖ステファノ(キリスト教で最初の殉教者)の祝日までお祝いが続きます。主婦は大変。何日もかけてメニューを考え、一週間かけて買い物をして(最近はスーパーも祝日に開いていることもあるので、足りなくなったものは買いに走ります)、家中のお掃除、テーブルセッテイング、お料理、そして片付けです。大家族のところは軽く15人は超します。そのための食器もすべて準備します。オードブルから、デザートまでかなりの量です。台所はまるで戦場状態、お財布はますますやせ細って、疲れます。

まず24日の夕食、この日は肉類は食しません。すべて魚料理になります。イタリア全土各州によってそれぞれ好まれるメニューがありますが、ここラッツイオ州では、capitone、オオウナギがこの日は登場。ただ蒸して酢漬けのような料理法で、やはり日本のうなぎの蒲焼は最高、と毎年改めて実感してます。まず、お祈り、そしていよいよ始まるオードブル、パスタ、メインデイッシュ。やっと終わるとイタリアのクリスマスケーキのパネットーネ,スプマンテで乾杯。テーブルにはトルローネ(ヌガー)、くるみ、ナッツなども並びます。そしていよいよ、ツリーの下に並べられたプレゼント交換、子供たち(たぶん大人も)にとって待ちに待った時間です。その後は、子供からお年寄りまでみんなで楽しめるクリスマスの代表的ゲーム、トンボラ(数字を並べるビンゴ風ゲーム)が始まります。横5列と縦3段階に分かれ1から90までの合計15の数字が書かれているカードを手許に適当に選ばれた数字が読み上げられ、自分の選んだカードに読み上げられた番号があるか無いか、緊張した???(大人たちは単調なこのゲームに半分眠っています。子供とお年寄りたちは真剣です)雰囲気の中で進められます。もちろん,夜10時には敬虔なる信者は近所の教会のクリスマスのミサに参列します。バチカンサンピエトロ大聖堂ではローマ教皇のミサが行われ衛星放送で全世界に放映されています。凍るような深夜、お腹いっぱい、手にはプレゼントをいっぱい抱え、遊びつかれ眠ってしまった子供を抱いて、A  domani! また明日!といいながらそれぞれの家路に着くファミリーたちです。

翌日 眠い目をこすりながら25日の朝を迎えます。数時間後、再び家族がそろいテーブルを囲みます。この日は昼食になります。トルテリーニのスープ、またはラザーニャ、子羊の肉料理などがローマクリスマス定番メニュー、何時間もかけて、また延々とおしゃべり(あらゆることが話題になります、メニューのことから政治、経済、サッカー、テレビ番組、親戚の隣人のバカンスの過ごし方まで)、更にまた食後ゲームを楽しんで家族の絆を改めて再確認するのです。26日は従兄弟たち、友だちも更に加わり、ますます家族の輪が広がっていきます。同じイタリアでも南にいくほど家族のつながりが更に強いようです。

12月31日、大晦日はコンサートに出かけたり、友達と新年迎える人たちもたくさんいます。

1月6日Epifania (救世主の御公現の祝日)までがクリスマス、子供たちには、またプレゼントが待ってます。良い子たちはBefana (御公現祭の前夜にホウキに乗って子供に贈り物を届ける老婆 )がお菓子、黒い炭のような砂糖菓子をいっぱい詰めた大きなソックスをクリスマスツリーの下に届けてくれます。

イタリアの子供たちは、クリスマス、ベファーナと2回もプレゼントが待ってます。昔、夫が私にべファーナのお人形をなぜか? プレゼントしてくれました。この日が過ぎると苦労して飾りつけたクリスマスツリーを片付け始めます。また家族もそれぞれの普段の生活に戻っていきます、次のクリスマス、また家族全員が揃って集まる日を楽しみに。

私の夫は3人兄弟。彼の両親が健在であったときは、家族全員集合,両親を中心にそれぞれの兄弟たちの家族がテーブルを囲み、息子たち、優しい?嫁たち、かわいい孫たち、更にひ孫に囲まれ、時には従兄弟たちも参加し軽く20人を超すそれはそれはにぎやかな典型的な大家族イタリアンファミリークリスマスでした。姑の作るお料理は最高で、80歳を過ぎても多人数の食事の準備はお手のもの、テーブルに乗り切らないほどのお料理が次々と並んだものでした。そう、典型的なイタリアのお母さん、マンマでした。

今は私達が主流になり、家族が集まる楽しさ、大切さを伝えていこうと思います。

三浦礼子

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イタリア主婦の銀磨き

—-ガイドのおばさんたちは普段こんなこともしています—

イタリア人のお宅に伺うとどこのおうちもとてもきれいにしています。雑誌にあるような素敵なインテリアやテーブルセッッティングのセンスはさすが美の国!とても真似できない!と感嘆してしまいます。そして大概どのお宅にもあるのが銀製品が飾ってある飾り棚です。

イタリアでは結婚式に銀製品をいただくことが少なくありません。また、洗礼や初聖体等のお祝い事がある際に引き出物として小さな銀の置物をいただくとも多いので、飾り棚の中のものは年々増えていきます。主人のお母さん、もしくはおばあさんの代からのものもあります。飾り棚以外にも家族の写真が入っている写真立ても銀のものが多くあります。

もちろん日本でも銀製品を使っていらっしゃる方はいらっしゃるとは思いますが、私の実家ではあまり使うことはありませんでした。日本ではどちらかというと銀食器よりはイタリアでは使わない漆器などを使うことが多かったと思います。そんな様々な銀製品ですが、さほど親戚の多くない我が家でも40年もイタリアで生活をしているとその数は多少なりとも増えてきています。そしてやはりメンテナンスには苦労します。最近ではあまり変色しない加工がしてあるものが多くなっていますが、昔からのものや長年お手入れを怠っていたものはやはり黒く変色してしまいます。

クリスマスや新年`には親戚、友人が集まる機会が多くなります。特にイタリアではクリスマスは家族、親戚で一緒に食事をすることが一般的です。。イタリアに来て初めてのクリスマスには昼食が始まってから前菜、パスタ、主菜、デザートを食べ続け、その後も延々とおしゃべりをして席を立つのが夕方であったのに驚いたものです。そんな時、テーブルには銀のナイフやフォーク、食後にはおしゃべりの合間につまむお菓子等を入れる銀の器が並びます。その為、普段からのお手入れを怠っている私は12月になると銀磨きをするのです。

イタリアのどこのスーパーでも銀磨き用のクリームを売っていて手軽に手に入れることができます。とりあえず2本購入し、意を決して磨き始めます。表面が平らなものは鼻歌交じりですいすいと磨いていきますが、毎回苦労するのが飾りの合間の小さな隙間です。綿棒を使っても歯ブラシでこすっても奥の黒ずみがこちらを見て嘲笑っているのです。

特にイタリアではブドウの装飾がやたらに多くお手上げ状態 です。

最近ではインターネットなる便利なものがあるので検索してみると、重曹とアルミホイルとともに熱湯を注ぎ入れるとあら不思議ぴかぴかに輝くとのこと。早速小さなもので試してみるとなるほど黒ずみはきれいになる!これで小さな小物や本数のあるカトラリーは楽勝!…かもしれない。因みにイタリアでは正式のセットは12人分でクリスタルのグラスセットも36脚です。日本なら何でも1セット五つなのに!とはいえど大きなものや石やエナメルの装飾があるものはやはり手作業になります。もちろん写真立ても手仕事になり家のものを全部集めてみたら16個もありました。クリームもさらに2本買い足して友人に泣き言をいいながら磨きます。腱鞘炎にならないでねと励まされながら磨いた後はエベレスト登頂に成功したような達成感です。(ちょっとオーバーですね。)

今年のクリスマスはコロナの影響で家族だけで過ごすことになりそうですがきれいになった棚をみているととささやかな満足感を感じます。これで新年も気持ち良くむかえられそうです。

遠藤由美子

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アドヴェント(待降節)☆彡

今日から、いよいよアドヴェントに入りました。

アドヴェントとは待降節、つまりクリスマス=イエスキリストの降誕を待ち望む期間です。西方教会では11月30日に最も近い主日(日曜日)からクリスマスまでの4週間をいいます。

アドヴェントはAdventus「到来」、「来臨」を意味するラテン語から派生した言葉で、人間世界へのイエスキリストの到来、そして再臨を表わす語としても用いられます。まもなく、クリスマスが到来するのです。教会の暦では、第一アドヴェントから新しい年を迎えます。

Evngelische-Lutherische Gemeinde Rom

キリスト教の教会には、4本あるいは5本のローソクの付いたアドヴェントクランツ(アドヴェントリース)が置かれます。

このアドヴェントクランツに第一アドヴェントから1週間ごとに1本ずつローソクを灯し、4本すべてが点灯された週にクリスマスがやってきます。現在使われるアドヴェントクランツの由来には諸説ありますが、16世紀にはドイツルーテル派において、その概念は存在していたようです。その後300年程を経てドイツのプロテスタント牧師ヨハン・ヒンリッヒ・ヴィッヘルンによって考案された物が原型になり、今日知られている4本または5本のローソクのアドヴェントクランツへと発展しました。

キリスト教の教会には、4本あるいは5本のローソクの付いたアドヴェントクランツ(アドヴェントリース)が置かれます。このアドヴェントクランツに第一アドヴェントから1週間ごとに1本ずつローソクを灯し、4本すべてが点灯された週にクリスマスがやってきます。現在使われるアドヴェントクランツの由来には諸説ありますが、16世紀にはドイツルーテル派において、その概念は存在していたようです。その後300年程を経てドイツのプロテスタント牧師ヨハン・ヒンリッヒ・ヴィッヘルンによって考案された物が原型になり、今日知られている4本または5本のローソクのアドヴェントクランツへと発展しました。

アドヴェントクランツは神の無限の愛(永遠の愛)と調和を象徴する丸い形をしていて、その周りが常緑樹で飾られています。常緑樹は緑色であり、すなわち希望と命をあらわすとされているからです。多くのアドヴェントクランツでは4本のローソクの真ん中に白いロウソクが立っています。

これはイエスキリストの降誕を通して世にもたらされたキリストの光であり、キリストのロウソクと呼ばれてクリスマスに4本のロウソクと共に点灯されます。諸国、諸教派によってロウソクの色も様々です。

色にはすべて意味があり、赤は愛と光、白は純潔と清らかさ、青は希望、そして紫は悔い改めと回心を象徴しています。カトリックや聖公会の教会などでは、4本のロウソクのうち3本が紫色、1本がバラ色のものがみられます。これはGaudete Sunday (Rose Sunday)と呼ばれるアドヴェント第3主日に灯されます。Gaudeteとは「喜びなさい」という意味です。アドヴェント第3主日のミサが「Gaudete in Domino semper」

English Catholic Church

(主において常に喜びなさい)新約聖書フィリピの信徒への手紙4章4節の言葉からはじまることから、喜びの色となるバラ色が使われます。アドヴェントキャンドルはその1本ずつが希望、平和、喜び、愛という名で呼ばれ、また、さらにそこからアドヴェントとキリスト降誕の出来事に結び付けて、預言者のロウソク、ベツレヘムのロウソク、羊飼いのロウソク、天使たちのロウソクと呼ぶこともあります。

人々は4本のアドベントキャンドルにその思いを託し、心をしずめ、自分をみつめなおしてクリスマスを迎える心の準備をするのです。

浅井 恭子

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イタリアの色に思う

数ヶ月日本にいて久しぶりに帰ってみるローマの空は青く澄みきり太陽はまぶしい。光の粒子が違うのか目に映ってくる色はピカッとさわやかで鮮明です。 乾燥した空気が顔にあたり日本のあの幽玄につながるどこか湿気を含んだ感じの風情や情緒を感じる空気と全く違う世界だなあと再確認しました。目に映る色は空気や湿度や光のベクトルの微々たる違いからひょっとすると同じ物体であっても違ってくるのではと思いました。 そして物の輪郭というか境界線になる部分がローマは日本より明確な感じがします。 人はやはり五感を通じて感じる印象が考え方や判断のつけどころに影響していくでしょうし、視覚でとらえられてきた色彩の再現が建築やファッション等など生活空間の色として生きているに違いありません。そんなイタリアの色の原点となったものに大理石の存在があります。

古代ローマは地中海沿岸の国々を次々に属州化してゆきそこからローマに送り込まれた建材や食材は膨大な量であったに違いありません。大理石もその筆頭でありギリシャや小アジア、エジプトからの実に美しい色大理石が運びこまれ、誰でも使えた娯楽施設の建設にも惜しみなく使われ、その美しい色がすべての人々の目に映っていたのです。

邸宅にはそれを小さく切った破片(テッセラ)で床にモザイク装飾が施されポンペイで見つかった名作「アレクサンダーモザイク」は、なんと150万個のテッセラが使われているそうです。中世には教会のアプシスに壮大なスケールでキリストやマリアをモザイクで表現し、その後ルネッサンス、バロック時代にも古代建築から大理石をはがして教会内外の壁の色どりに大いに再利用されたのでした。もちろんイタリアもカッラ―ラで採れる白大理石も含めてこの自然が放つ無尽蔵の色合いはイタリアの色彩の原点からは外せないと思うのです。

村山依子

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Bar

日本の街に星の数程あって、日本人の生活に無くてはならないものにコンビニがあり、その機能もまるでスマートフォンのようにどんどん多様化しています。ところがイタリアにはコンビニが存在しないのです。その代わりイタリアの街に星の数以上にあるのではと思う位バールがあります。

バールというのは日本の喫茶店に近いのですが、お茶を飲んでゆっくりするの言うよりはカウンターの立ち飲みでふらっと気軽に食前酒、コーヒーなどを飲む所です。タバコも売っているバールもあれば昼食のセルフサービスを出す所、ゲームセンター付き、トトカルチョ(サッカーの予想賭博)や宝くじの売店付き等コンビニとは違いますが多機能な場所なのです。朝7時頃から開店して朝食をカウンターで取る人、仕事や買い物の合間コーヒーを飲んで立ち去る人々、食後友達と連れ立って来て誰かのおごりでエスプレッソでしめたり、最近はサンドイッチやピッツァが売れ残らないようハッピイアワーといって夕方からアルコールとセットで800円位の食べ放題で出すのが流行っています。

夜9時位までとにかくひっきりなしに客がきます。営業時間も長くかなりきつい商売だと思いますが、利潤が高いのか、私の家から3分圏内でざっと10軒はあります。たいていの人は行きつけの馴染みのバールがあってバールマンも客に冗談を飛ばしているし、家の近所では、道路にしつらえたテーブルを囲んで老人立ちがコーヒー一杯で何時間も談笑したりトランプで遊んだりしています。家を出てバールにくれば誰かに会えるという意味で老人にとってはかけがえのない憩いの場所なのです。

夜9時位までとにかくひっきりなしに客がきます。営業時間も長くかなりきつい商売だと思いますが、利潤が高いのか、私の家から3分圏内でざっと10軒はあります。たいていの人は行きつけの馴染みのバールがあってバールマンも客に冗談を飛ばしているし、家の近所では、道路にしつらえたテーブルを囲んで老人立ちがコーヒー一杯で何時間も談笑したりトランプで遊んだりしています。家を出てバールにくれば誰かに会えるという意味で老人にとってはかけがえのない憩いの場所なのです。

外国から来た我々にとっては、最初の身近な社交の場はバールかもしれません。日本にもこんなスペースがあればなあと、帰国する度に思うのです。

村山 依子

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イタリア風おもてなし番組

最近、イタリアの女性たちを中心に絶大な人気を誇るテレビ番組があります。「Cortesie per gli Ospiti」というもので、訳すと「お客様へのおもてなし」です。一種のリアリティーショーで、2組のカップルがいかに招待客をもてなすことができるのか、を競います。

まず1組目が、2組目のカップルと審査員たちを家に招き、食事を提供します。次の日にはその反対で、招待された方が招待する番です。このように書くと、美味しい料理を振る舞いさえすれば、勝利を手にすることができるかのように聞こえるかもしれませんが、この番組はそう甘くはありません。3人の審査員がかなりの曲者なのです。

・料理人のロベルト厳しい料理の評価をします。

・建築家であり家具デザイナーのディエゴ室内の装飾が、すべての面において調和がとれているのか、色彩の具合や照明の当て方に至るまで、完璧を求めます。

・ライフスタイルおよびテーブルマナー専門家のクサバテーブルセッティングがその環境に適当であるのか、テーブルクロスの布の質や、食器のタイプが、テーブルの中央に飾られた花やローソクと嫌味なくマッチしているか、お皿のサイズが料理に適しているのか、などなどこの人の厳しさに比べたら、先の二人なんて優しいものです。さらには食事中の会話が招待客に気分のいいものであるのかなども評価してきます。

このような三人により史上最強の審査を受け勝者が決定されます。料理は味だけではなく、それを取り巻く環境や作法と相まって、初めて一流と呼べるものになる、といういかにも、美と食を愛するイタリア人が好みそうな番組です。この「おもてなし」番組にJASGA会員 竹村文江さんが出演しました。その時の体験談をお聞きしました。

7月の初めに友人ロベルタから「一緒に出てくれる?」と連絡を受け「covidのせいで暇だからいいよ」と気軽に返事をしたものの蓋を開けて見たらまあ、重労働でした(笑)たった45分の番組のためになんと三日間の撮影!

1日目はロベルタ宅にて我々が料理を作る場面。2日目はライバルカップル宅に審査員らと共に招かれお食事会。3日目はロベルタ宅にて審査員、ライバルカップルを招いてお食事会。つまり料理をまた作り直すわけです。

長年の友人ロベルタは西洋版薬膳の大家を目指していて近々出版されるレシピブックの宣伝のためにも「この勝負 絶対負けられない」と鼻息荒く、撮影前に彼女の家に何度打ち合わせに行ったことか・・。彼女は完璧なベーガンなのでメニューもベーガン。彼女は半年前にローマ郊外の素敵な3階建一戸建て(いわゆるvillaですね)に引っ越ししたばかり。庭には30本ものオリーブの木々が・・と言うと聞こえはいいけれど実際は庭師に毎日のように来てもらってお手入れが大変なのです。

covid以前はイタリア中を周り、狭いマンションなどでも撮影していたこの番組もcovid後は屋外で距離を置きながら、が必須条件。十人のスタッフの一人は常に1mの間隔がたもたれているかをチェックする係。他人と触れ合ってはいけないし、皿などを手渡しすることもできないのです。「あー近づきすぎ、カット、撮り直し!」の連続でスタッフも審査員もピリピリ。当然料理もマスク、ゴム手袋をしながら。(ただし撮影する時には外すので番組の中では誰もマスクもしていませんが)食器はもちろん料理道具も何もかもが消毒されなくてはなりません。揚げ物の下に懐紙をしこうとしたら「消毒してないからダメ!」封を切ったばかりのパックだったのでなんとか許されました。

テーブルセッティングが私の腕の見せ所だったのですがなんとぶっつけ本番でやることに。揚げ物をしている最中に「セッティングお願いします!」と監督の声。テーブルもcovid用に4mx2.5mという巨大なものをテレビ局が用意。ここに7名が座るのです。この日のために大枚をはたいてロベルタが買った食器セットが熱帯植物柄の超くどい柄〜。(前もって相談してほしかったわ・・絶対反対した!)これをどう上品にしかもカントリー風にアレンジするか・・。2台のカメラに撮影されながら、10名のスタッフが見つめる中 気持ちを集中させるのが大変でした。しかも背中を向けないでくれ、だの ずっと独り言を言いながらやってくれ、だの、もううるさいのなんの。本当は1hかけてじっくりやりたかったのに15分足らずで「はいカット、もういじらないでください!」その割にはイメージ通りに仕上がりホッとしました。

7月の下旬は一番暑い時期。この日も37度の暑い日だったのでキンキンに冷やしたおしぼりを用意、(綺麗に漆器に入れるつもりがこれも手が触れ合うとダメだ、と言うことでソーセージのように漆器からぶらりと下げて)welcome drinkのプロセッコのボトルには一期一会と記し意味を説明。稲荷寿しを出したのでお手拭きも出し、配膳の際は日本製の赤漆大盆が大活躍。デザートの黒胡麻ジェラートと共にエスプレッソでなく抹茶を立てて出しました。少しは「日本人のおもてなし文化」を紹介できたかな、と思っています。終日観光を10日間連続でやったくらいの疲労度でしたが(こういうたとえも変ですね!)終わってみれば何事も経験、です。トロフィは記念にいただけるのかと思ったらなんと一つのトロフィを使い回ししているのです。我々の手元に残ったのはトロフィに貼り付けられた二人の名前が印刷されたシールのみ(笑)

この記事がサイトに載るのは番組放映後。審査員たちが何をどう評価したのか私も興味深々で放映日を待っています。

ちなみに11月末以降ならyoutubeでも見られるようです。全てイタリア語ですが興味のある方はどうぞ。以下のように打ち込めば出てくるはずです。cortesie per gli ospiti エピソード名Roberta Humi vs Elisa Federica

竹村文江

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