聖人トマス (San Tommaso) : 彼はイエスの12弟子の内の1人ですが、ルネサンス初期の絵画などには、特に若者でヒゲ無しのイメージで、よく描かれています。彼のシンボルマークは : 三角定規、デザイン用定規、腰ひも、そして殉教の際の、槍、又は短剣などでしょう。彼が有名なのは、何と言っても、イエスのよみがえりを信じなかった事でしょう。イエスは死んで3日目によみがえり、初めて弟子達の元に現れた時、十字架上で刺された槍の傷跡を、弟子達に見せました。トマスはその場にいず、後で聞いて「 傷跡を見ないと信じない ! 」と叫びました。それから8日後に再びイエスが弟子達の元に現れた時には、トマスも居合わせたのです。イエスはトマスに傷跡を触らせて、「 あなたは私を見たので信じたのか。見ないで信じる者は幸いである。」と……. どう逆立ちしたら、一瞬にして そういう言葉が出てくるのか….. ですからトマスは、イエスの傷跡を触っている場面が、よく描かれます。腰ひも :聖女マリアと、聖人トマスのエピソードです。この話もいつ頃から出てきたのか、定かではないのですが….. マリアは亡くなりひつぎに入れられた後に、天国に召されていったようですが、その時もトマスは、いませんでした。ので、彼は天国に昇天したマリアに、天国にいったという証拠を見せて下さい、と懇願します。そうするとマリアは彼女が付けていた腰ひもを投げおろしたと言われています。このテーマは、フィレンツェの画家達が好んで描いたと言われ、Pratoのドゥオモを訪れると、聖女マリアの腰ひもを、聖遺物として、見ることができます。バティカン博物館のPinacoteca に入り、一番奥までいきましょう。そこに展示してあるラファエロの “キリストの変容”は、あまりにも有名ですが、その右横にある 、イエスから勝利の冠を授かっている処女マリアの絵も、柔らか味があり、調和に満ちていますが、そこにトマスがいるでしょう。からになったひつぎの周りにいる弟子達の中に、若者でヒゲ無し、両手に腰ひも(というか、この場合はベルトと呼んだほうがいいのか… 小穴まで、しっかりあいています…..) を持っている彼が見られます。マリアからの貴重な贈り物とでも、解釈しましょうか… 今述べているような事は、知っていたら面白いでしょうが、絵を鑑賞する為の本質的な要素ではありませんので、知らなくても構いません。定規 :インドでの、彼の伝道活動の話です。異教信者のGundaforo王は、トマソに王宮を立てるようにと命令し、豊富な資材を与えます。そして王はどこかに行き、王の不在中に、トマスは多くの人を悔い改めさせ、貧しい人にお金を与えました。王が帰ってきたので、トマソは王に「 王宮はあなたの死後でしか見られない、何故なら天国に建てたからだ。」と言ったので、王は怒ります。その時に、王の亡くなった弟が突然に現れ、天国に王宮があるのは本当だと、トマスの言葉を認めたので、王は悔い改めてキリスト教信者になりました。だからトマスは建築家の守護聖人といわれるゆえんです。槍 :インドの異教の祭司が、槍を持った兵士に、トマスを殺させます。十字架を抱いて、槍が体を貫いているトマスが、よく描かれます。トマスの殉教場所は、はっきりとわかっていませんが、インドのKerala州か、Coromandel州であっただろうと言われています。どちらの場所も、南インドの東西の海岸線にあるようです。聖人トマス像を見たかったら、RomaのSan Giovanni in Laterano 大聖堂に行きましょう。礼拝堂内部に、ズラッと聖人像が並んでいる中、定規やベルトを持っている男性像が、まさに彼なのです。