ローマのリフォーム

“永遠の都”とローマは呼ばれています。何故そう呼ばれるのかとふと考えてみました。永遠には不滅とか不変という意味も含んでいるわけですからやっぱり古代ローマから繋がる現在とこれからの未来に継続していく都という事になるのでしょうか。もちろんどの街にも歴史の流れがあるわけですが、自宅から市営バスに乗って5つ目位の停留所に2000年前の建物「コロッセオ」がそびえていたり、歩いて15分でシーザーが建てた25万人の観客席のある競技場でジョギングか犬の散歩でもするかとなると世界広しといえどもこんな不思議な存在の街はローマ位しかないのではないでしょうか。

目の前に何の機械も使わず人の汗だけで人のサイズをはるかに凌ぐ巨大建築を造ってしまった事、しかも2000年も持ちこたえる建築を造ったという事実をつきつけられて本当に心からやるじゃないかという同じ人間として畏怖心と誇りが沸き起こるのです。 しかし過去にこの古代の遺産ともいうべき建物達は実は散々に痛めつけられていたのです。500年ほど前から時の支配者であった法王や貴族らは新しい建築のために古代の建築物から建材をはぎ取り教会や宮殿を建てたし、1930年頃ムッソリーニの一存のもとに大道路を造る為に古代、中世は蹴散らすように壊されていったのでした。 今こうして世界遺産として大切にされ始めたのはつい最近100年ほどのようです。 現代のローマは過去の反動作用か保存の一途のようで、建物の外観をそのままに保って中をリフォームするのが流行しています。

もう使われなくなった屠殺場やビール工場が現代美術館に、もと鉄道の駅がEATALYという高級イタリア食材店に、搾乳場がギャラリーに、500年前のローマ第一号の宿屋がレストランにといった具合におしゃれに変身してゆくのです。逆に本当の現代建築は5本の指に収まる位しか探せないのです。

村山依子