イタリア主婦の銀磨き

—-ガイドのおばさんたちは普段こんなこともしています—

イタリア人のお宅に伺うとどこのおうちもとてもきれいにしています。
雑誌にあるような素敵なインテリアやテーブルセッッティングのセンスはさすが美の国!
とても真似できない!と感嘆してしまいます。
そして大概どのお宅にもあるのが銀製品が飾ってある飾り棚です。

イタリアでは結婚式に銀製品をいただくことが少なくありません。
また、洗礼や初聖体等のお祝い事がある際に引き出物として小さな銀の置物をいただく
とも多いので、飾り棚の中のものは年々増えていきます。
主人のお母さん、もしくはおばあさんの代からのものもあります。
飾り棚以外にも家族の写真が入っている写真立ても銀のものが多くあります。

もちろん日本でも銀製品を使っていらっしゃる方はいらっしゃるとは思いますが、私の実
家ではあまり使うことはありませんでした。
日本ではどちらかというと銀食器よりはイタリアでは使わない漆器などを使うことが多か
ったと思います。
そんな様々な銀製品ですが、さほど親戚の多くない我が家でも40年もイタリアで生活を
しているとその数は多少なりとも増えてきています。
そしてやはりメンテナンスには苦労します。
最近ではあまり変色しない加工がしてあるものが多くなっていますが、昔からのものや長
年お手入れを怠っていたものはやはり黒く変色してしまいます。

クリスマスや新年`には親戚、友人が集まる機会が多くなります。
特にイタリアではクリスマスは家族、親戚で一緒に食事をすることが一般的です。。
イタリアに来て初めてのクリスマスには昼食が始まってから前菜、パスタ、主菜、デザー
トを食べ続け、その後も延々とおしゃべりをして席を立つのが夕方であったのに驚いたも
のです。
そんな時、テーブルには銀のナイフやフォーク、食後にはおしゃべりの合間につまむお菓
子等を入れる銀の器が並びます。
その為、普段からのお手入れを怠っている私は12月になると銀磨きをするのです。

イタリアのどこのスーパーでも銀磨き用のクリームを売っていて手軽に手に入れることが
できます。
とりあえず2本購入し、意を決して磨き始めます。
表面が平らなものは鼻歌交じりですいすいと磨いていきますが、毎回苦労するのが飾りの
合間の小さな隙間です。
綿棒を使っても歯ブラシでこすっても奥の黒ずみがこちらを見て嘲笑っているのです。

特にイタリアではブドウの装飾がやたらに多くお手上げ状態 です。

最近ではインターネットなる便利なものがあるので検索してみると、重曹とアルミホイル
とともに熱湯を注ぎ入れるとあら不思議ぴかぴかに輝くとのこと。
早速小さなもので試してみるとなるほど黒ずみはきれいになる!
これで小さな小物や本数のあるカトラリーは楽勝!…かもしれない。
因みにイタリアでは正式のセットは12人分でクリスタルのグラスセットも36脚です。
日本なら何でも1セット五つなのに!
とはいえど大きなものや石やエナメルの装飾があるものはやはり手作業になります。
もちろん写真立ても手仕事になり家のものを全部集めてみたら16個もありました。
クリームもさらに2本買い足して友人に泣き言をいいながら磨きます。
腱鞘炎にならないでねと励まされながら磨いた後はエベレスト登頂に成功したような達成
感です。(ちょっとオーバーですね。)

今年のクリスマスはコロナの影響で家族だけで過ごすことになりそうですがきれいになっ
た棚をみているととささやかな満足感を感じます。
これで新年も気持ち良くむかえられそうです。

遠藤由美子