Tiziano Terzani ティツィアーノ テルツァーニ
特派員、作家 (1938 生ー 2004 没 66才 )
。。。アジア諸国の特派員をして、歴史の一証人(嘘を書かないようにするためには、何が何でも危険をいとわない!! ) になる事に生き甲斐を感じた彼の生涯に、興味を覚えました。しかし、ビックリ ! 日本にも、すごく知られていた彼だったのですね…..彼の事をもう知っている人も多いでしょうが、知らなかった私に どうぞ、付き合ってください。。。
Firenze生まれ。父親は パルチザンで 共産党、母親は カトリック教徒という家庭に生まれました。病弱だったので、両親は彼の健康を心配し、アペニン山脈の Orsignaで 静養をさせたのですが、その土地が生涯を通して、彼が帰っていく場所になったようです。
ドイツ軍が 退却をして、 Firenzeの街が 解放され、彼は小学校へ 通い始めます。
高等学校入学を、教師は両親に強く進め、両親は 学校に通うための ズボンを月賦で購入して、入学させます。。。月賦でズボン購入なんて。。。
いろいろな友人や教師に恵まれ、彼は成長していきます。アルバイトで、ある新聞のスポーツ欄を担当する事になり、記事に載る自分の名前、新聞記者に与えられる特等席、等も、17才の彼にとっては、新鮮な喜びになった事でしょう。
高等学校卒業証書(il diploma) を手に入れて、銀行員という輝かしい職業の就職話が飛んできますが、彼は断ります…..「 引き受けるという事は、自分は市民的に死んだも同様だ」、というわけらしい。。。銀行員の方、気にしないでね、彼の考え方が絶対だと 言っているわけでは、ありませんので。。。もちろん 両親は 大反対、何のためにズボンを月賦で買ったのかと 思った事でしょう。
大学の、法学部に進みます。5人だけ採用という国家試験で、2番目に 入ったそうです !
この時期に、将来妻となるAngelaと、知り合います。彼女の家族は 少し変わっていて、お父さんが画家、お母さんが 建築家、やって来る友人達も同雰囲気の人達….それに比べると、彼は、父親が 共産党、母親がカトリック教徒というので、Angelaの家の雰囲気と、さぞかし違った事でしょう。彼は 、Angela家族から、又 もちろん彼の両親から、友人達や教師から、と、さまざまな影響を受けながら、自己を確立していったのでしょう。
大学時代は、法律よりも、その当時に起こった出来事、に興味を示したみたいで、その線からいって、 映画だって、興味の範囲内に入っていたそうです。彼や 彼の父親も病気にかかり、経済的にも苦労した時代でした。
大学を卒業して、Olivetti に就職しました。それから数か月後に、Angelaと 結婚。世界中に、代理店や工場があるOlivetti ですから、彼も、デンマーク、ポルトガル、オランダ、イギリス、そして、日本(1965年 最初のアジア訪問地)、香港と飛び回り、中国への夢が 段々と、固まっていったそうです。
1966年(28才 )に、Orsignaに、土地を買えたそう。ズボンを月賦でと言っていた人なのですから、もうここいらで、満足しても いい位なんですが…..
1967年、彼は 南アフリカの ヨハネスブルグに、やって来ます。ちょうど 首相の暗殺が起こり、その当時この国には アパルトヘイト(黒人に対する白人の人種差別政策。1991年に廃止 )があったので、政治的緊張も高まっていました。そういう中で、彼は Olivettiの社員としてだけでは 満足できず、記者として記事を書いたりしたようです。記事のタイトルは、”クリスマス ニグロ(Natale negro) ”。
こうなると、Olivettiの仕事をするのが、耐えられなくなってきた。休職届けを出して、奨学金(しょうがくきん。話し言葉では、しょうがっきんでもいいらしい)を得て、ニューヨークの大学へ入学出来たみたいです。別の奨学金も得て、世界中を旅行したとか。。。マア、並の人では、なかったか。。。
アメリカ合衆国のジャーナリズムの世界に、心を動かされたようです。権力に追従しない 自由さを。
1968年(30才 )、カリフォルニアに移住して、大学で、中国語を学び始めます。その当時、文化革命が中国で起こったこともあって、彼は中国に渡り、今まで 本や 新聞雑誌などで得た知識と、実際とを、照らし合わせてみたいという 欲望にかられたようです。
1969年(31才)、とうとうイタリア国公認記者名簿に、正式に名前を記録して、第2の人生が始まります。大学卒業と共に、Olivettiを辞職、もう後には引けないという決意を込めて。
同年、ミラノの 日刊新聞紙 il Giorno に、記者として就職しました。が、しばらく仕事を続けた後に、「 新聞記事を書くというのは、自分本来の仕事ではない と感じる。中国へ行って、特派員の仕事をしたい。」と言うのですが、この新聞社には 席がなく、彼は 辞職します。
それから ヨーロッパ中を打診して、ドイツの会社に、アジア南東支局の最初の特派員として、採用されました。シンガポールに事務所を開けて、という間もなく、最後のヴェトナム戦争が勃発(ぼっぱつ)したので、彼は急きょ ヴェトナムに向けて、出発。
ヴェトナムの 前線で、レポーターとして 記事を 送り続けました。
その経験を、ヴェトナム戦争の特派員日記、として 出版しました…”Pelle di leopardo”
1972年4月~73年2月の、最後の決定的なヴェトナム戦争が 書かれてあり、あちらこちらの前線に行き、エピソード、人々の様々な表情、泥沼のような疲労感、等が詳細に 書かれてあると、あるジャーナリストがコメントしています。
1975年4月30日 サイゴン(それ以後は、ホーチミン )陥落 :
わずかの記者が、その時だけではなく、北ヴェトナムが政権を得た後も 何ヶ月間か滞在し続けたというが、彼もその内の一人だったそう。
「一行でも間違いがないように、死体の臭いに鼻をつまみながら..」サイゴン戦の全てを 追っていったそうです。
最後の数日、彼は 南ヴェトナム政権により、タイの バンコクへ 追放されましたが、「 大混乱に 陥ったサイゴン ….もう数時間で 、サイゴンに北ヴェトナム軍が入ろうとする その時に、彼は 飛行機に乗り、唯一の乗客として、ヴェトナムに再び戻ってきて、すでにチェックの機能を果たしていなかった空港を ゆうゆうと出て、 サイゴンの混乱の中に消えていった。真実を探そう、その目的の為の 情熱と衝動、勇気は、計り知れないものがある。」と、彼の ある同僚は 語っています。
(続く)
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